みんなが自分の心に従ったら
自分の望みと、社会の形を考える
人から求められる役割や、「こうあるべき」という考えを優先し続けると、自分が何をしたいのかわからなくなることがあります。
そうした苦しさを抱える人と話すとき、私は、「自分の心が向かう方を大切にしてほしい」と伝えます。
周りに合わせることが当たり前になると、自分の気持ちは少しずつ後ろへ追いやられていく。
本当は嫌だったこと。
もう続けるのが苦しいこと。
少し離れてみたいこと。
ずっと気になっていたこと。
そうした気持ちを、いったん自分のところへ戻してみる。
自分はどうしたいのか。
どちらへ向かいたいのか。
それを考えることは、その人が自分の人生に戻っていくために、大切なことだと思っています。
でも、その言葉を伝えながら、ときどき考えます。
もし、みんなが自分の心に従うようになったら、どんな社会になるのだろう。
人の欲求がぶつかり合う、暮らしにくい世界になるのか。
みんなが自分にとって楽な方を選び、必要なことを担う人がいなくなるのか。
それとも、誰かが無理をし続けなくてもよい社会に近づくのか。
私は、人が心に従うことを、応援していてよいのだろうか。
「したい」は一つではない
「したい」と感じるとき、心の中で動いているものは一つではありません。
今は楽しみたい。
楽になりたい。
苦しさから離れたい。
誰かに認められたい。
気になっていることを試してみたい。
この先も大切にしたいものや、今は苦しくても進みたい方向もあります。
それらは、きれいに分かれてはいません。
休むことは、疲れた自分を回復させます。
今は抱えきれないものから距離を取り、自分を守る時間にもなります。
何となくスマホを見る時間にも、楽しさや人とのつながりがあります。
そこには、考えたくないことから少し離れたい気持ちが重なっていることもある。
一つの行動の中に、いくつもの気持ちが重なる。
心の声は、いつも一つにまとまって聞こえてくるわけではありません。
休みたい。
でも、投げ出したくはない。
離れたい。
でも、関係を失いたくはない。
楽になりたい。
でも、この先の自分を諦めたくはない。
どれも、その人の中にある気持ちです。
私は、心に従うとは、いくつもの気持ちに耳を傾けながら、これから向かいたい方向を選ぶことだと考えています。
今の自分。
この先の自分。
そして、関わる人たちのこと。
そのすべてを含めて、進む方向を考えていく。
みんなが心に従った先で
一人ひとりがそうやって自分の心を聞くようになれば、社会は今と同じ形ではいられなくなるはずです。
これまで黙って引き受けられていた役割に、「もう引き受けられません」という声が上がる。
誰かの我慢によって隠れていた負担や衝突が、表に出てくる。
一見すると、以前よりまとまりのない社会に見えるかもしれません。
それは、これまで見えなかった無理が、表に現れた姿でもあります。
働く時間を減らしたい人も、ゆっくり暮らしたい人もいるでしょう。
それでも、誰かが担わなければ立ち行かないことは残ります。
誰が我慢するかではなく、どう分け直すか。
進んで担いたい人が少ない役割を、誰かの善意や罪悪感だけに頼らず、どんな形で支えるか。
必要なことを、誰かの善意や罪悪感だけに任せず、どんな形で支えるか。
自分の心を大切にする人が増えれば、社会はそうした問いを避けられなくなります。
望み同士がぶつかることは、なくならない。
自分の選択が、誰かに影響することもあります。
すべてが望んだ通りになるわけでもありません。
望みがぶつかる場面でも、自分の心をなかったことにせず、そこから話し合いを始める。
かなわない望みも、そこにあったものとして扱われる。
少なくとも、みんなが自分の心に従う社会は、誰もが好きなように振る舞う社会とは違います。
それぞれが自分の望みを持ったまま、他者の望みとも出会い、暮らし方を組み直していく社会なのだと思います。
私が伝えたいこと
自分の心も、自分の人生を決める判断の中に入れていい。私は、そう伝えたいと思っています。
最初に浮かんだ気持ちを手がかりに、その奥や隣にある気持ちもたどっていく。
周りから求められていることや、現実に起きていることと並べながら、自分はどう生きたいのかも考える。
その人の心が、その人のこれからを決める話し合いに加わること。
私が伝えたいのは、そこなのだと思います。
みんなが自分の心に従った先が、今よりよい社会なのかは、まだ分かりません。
でも、自分の心を置き去りにせずに生きることは、大事にしていい。
今は、そう考えています。


Akariさん、こんにちは。
自分の気持ちに蓋をして生きてきた場面がたくさんあったな…と記事を読んで感じました。
人の話をていねいに聴くことも大切ですが、それと同じくらい、自分自身の心の声を大切にしていきたいと思いました😊
誰が我慢するかではなくて、お互いの気持ちを大事にしながら支え合える世の中になるといいですよね。
Akari Miyaseさん、こんにちは。
自分の心の声が分からない人も増えているのではないかと感じています。外側に意識が向いていると、なかなか自分の本当にしたい事に気づきません。自分の内側に意識を向けるには余白のある生活、忙し過ぎない社会が必要なのかも知れませんね。